核戦争で「初期化」された人類の一部がランダムに選ばれて異星に転送され、人類をどうやり直すか議論する
目を覚ますと海中だった。サガミは、カンブリア的生物に追われ溺れかける。水面に顔を出すと、見渡す限り海。やがて水中から浮上した白い小島が姿を現す。泳ぎ着くと直径が約二十mの六角形の筏。内部は快適な部屋で、六辺は透明なチューブ状の回廊。やがて周囲の海には無数の筏が浮上し、水平線まで埋め尽くされていった。
周囲を探索したサガミは、アリーチェと名のる女性のほか、他の人たちと出会う。個人が一つの筏(モジュール)を与えられたらしい。筏は移動でき、他の筏と接続できる。
太陽以外に空に浮かぶ三つの巨大な月。ここは地球ではない。
サガミは人々と経緯を確認する。
核ミサイルを保有した日本。一部急進派がアメリカに先制核攻撃をしたが報復された。地表が炎に焼き尽くされようとしたとき、一部の人間がここに「転送」された。確実なのは地球に戻る手段はなく、仮に戻れても住めないということだ。
混乱していた人々は社会秩序を再建し始める。
転送により生じた状況が徐々に明らかになる。
家族と人間関係はリセットされた。数十万人以上いるらしい転送者はランダムに選ばれ、家族や知り合いは見つからない。
国も国境もなくなり、政治的・宗教的権威が喪失した。
歴史も芸術もすべては人の記憶の中。服以外の財産は失われ、経済もリセットされた。
やがて事情を把握する人間「翻訳者」が少数存在することが分かる。転送をしたのはデミアージと呼ばれる存在だという。
転送から七日目、翻訳者は、デミアージの意志を伝えた。
「これは転送された百万人の人類への執行猶予であり更生の機会である。人類再生のための居住区画プランを決定せよ。できねばモジュールは動力を失い、永久に分断される」
これは国家を作り直すか、という問題だ。
残存人類である転送者たちは、この問題にどう答えるべきか会合し議論した……。
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