SFプロトタイピングで大切な3つのO(オー)

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私は、SFプロトタイピングでは3つのO(オー)が大切だと考えています。

  1. Open mind――多様性を受け入れる
  2. Open source――オープン・ソース、社会にシェアする
  3. Ongoing――継続的に取り組む

Open mind――多様性を受け入れる

SFは多様性を擁護する文学ジャンルです。SFでは、「今、ここ」で生きる我々とは違う存在についてよく考えます。遥か未来の人類であったり、ロボットや異星人であったりします。主人公自身がそのような存在であることもよくあります。そのような存在は、我々とは違う文化、常識、価値観を持っています。今、「我々」とひとくくりにしましたが、もちろん現実にも文化や出身によって多様な価値観が存在します。たとえば、ロボットにとってお金は無意味なものかもしれません。未来人にとっては労働することの意味が変わっているでしょう。ある異星人は個性よりも集団を優先するかもしれません。SFは、極端な例を示すことによって、現実に存在するさまざまな価値観について改めて考えるきっかけをくれます。

Open source――オープン・ソース、社会にシェアする

SFプロトタイピング成果物の物語は、企業の内部に留めるよりも広く世間に公開することが望ましいです。ソフトウェア開発でのオープン・ソースのように公開して多くの人に使ってもらうほうがよいでしょう。物語自体の著作権を保持するか、クリエイティブ・コモンズを付与して限定的な著作権を主張するかなどは自由です。しかしどちらにしても物語で扱った「アイデア」に対しては著作権を行使することはできません。

一つのアイデアが別のアイデアを刺激することもよくあります。SFそのものも、作家同士、作家と読者の対話によって進化してきました。SFプロトタイピングで示された物語やアイデアは、公開することによってさまざまな角度からフィードバックを得ることができます。

アイザック・アシモフは1942年に、SF短編の中で「ロボットは人間に危害を加えてはならない」などのロボット三原則を示しました。これを出発点として、現代の我々がどうAIに接するべきか、今でも考えることができます。たとえば「人間Aと人間Bのどちらかに危害が及ぶ場合、AIはどちらを選ぶべきか」、あるいは「人間1人と人間5人のどちらかに危害が及ぶ場合、AIはどちらを選ぶべきか」(倫理学でのいわゆるトロッコ問題)などです。またAIが生成した物語や画像(このページでも使っていますが)は、短期的・個人レベルでは興味深く、役立つかもしれませんが、長期的には人類の創作意欲を奪う可能性もあります。人間が作り出した存在にとって人類と個人のどちらが優先されるのか――SF作品は公表されることで、そのアイデアが我々に考えるきっかけを提示し、長い時間にわたって我々に問いかけ続けてくれます。

Ongoing――継続的に取り組む

SFプロトタイピングは、一度やって終わりではなく、継続的に取り組むものです。SFプロトタイピングでは、(一例ですが)成果物としてSF短編が完成し、それについて議論を行うことでひと区切りが付きます。一年または数年おきにこのような過程を繰り返すことで、これまで見えなかったものが見えてきます。たとえば、以前書かれた物語を再検討することや、別の分野や製品について別の物語を書いて、それについて議論することもできます。同じ登場人物が別の行動をとった場合について考えてみることもできます。力強い物語は、別の新しい物語を呼ぶ力を持っています。そこから新しい刺激が得られ、新しいアイデアが産まれてくるのです。

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