ゲンロンSF創作講座が一区切りつこうとしています。受講生のみなさん、コロナで大変な状況の中、お疲れさまでした。SF創作講座の受講生・元受講生が自主的に現受講生の作品にコメントするインターネット ラジオ「ダールグレン ラジオ」に出演させていただきました。SF創作講座2019の最後の締めくくり、最終課題の梗概(卒業論文のような感じ)とそのひとつ前の第9回課題に対する実作を読んで好き勝手にコメントを付けさせていただきました。第9回課題は、 高山羽根子さんによるテーマ「『20世紀までに作られた絵画・美術作品』のうちから一点を選び、文字で描写し、そのシーンをラストとして書いてください。」でした。
受講生の人にはちょっと上から目線と感じるかもしれませんがご容赦ください。
ここでは、特に梗概の書き方について全体的に感じたことを書きます。以前に以下のような記事も書いています。ここで書いたいくつかのポイントは以下で書いたことと重複します。
小説を書こうとする人に4:梗概を書く(続き)、アイデアややる気が出ないときは
まず、SFというよりファンタジーが多いということ。『鬼滅の刃』の影響かな?
私は、SFとは、記述されている現象に広義の科学的説明が成立するフィクションであると考えています。これが唯一の定義というわけではないのですが。AIやロボットや宇宙が出るからSFでありません。広義の科学とは、よく整理されていれば魔法体系も含まれうるでしょう。しかし、何も説明しない作品をあえてSFと呼ぶ理由はないんじゃないかな。
「自分の書きたいものがSFでないけどSF創作講座に参加した」という人も多いでしょう。確かに元受講生でもSF以外で成果を出した人もいます。しかし逆に考えれば、これは絶好のチャンスなのです。ここは掛け値なしに日本SFの最高峰の講師陣、そして受講生にもSFに詳しい人が集まる場所なのだから、あえてSFに取り組み、挑戦してほしい。
第9回課題では、課題にきちんと答えられていないことがあると感じました。特に「文字で描写し、そのシーンをラストとして書いてください」という点が。執筆者は、編集者や読者の要望や期待に応えることが求められます。課題をしっかり読んで理解し、それをまずこなすようにしてみてはどうでしょう。
また梗概では「こんなに面白いアイデアがあるんです」というアピール、ウリが弱い。梗概では、読み手に「読んでみたい」と思わせることが重要です。そのためにはウリを1行の「ログライン」にまとめるのがいいでしょう。
読者の立場から、自分の書いた梗概を読み直してほしい。あるいは他の人に読んでもらうのでもいい。情報の出す順番が整理されていないと話が分かりづらくなります。梗概というよりは文章の書き方のレベルの話です。梗概では、通常の説明文とは違い、これまでになかった話のアイデアを説明するわけです。通常の説明文よりもさらに気をつけて書く必要があるのではないでしょうか。
関係ない些末な情報は削る。読み手を混乱させるだけです。一定の字数を決めて、それ以内に収まるように推敲することを強く勧めます。このような文章訓練をしないと、だらだらした書き方になります。推敲するということは読み直すということでもあります。
それでは最終課題に向けてがんばってください!