AI(NotebookLM)をSFプロトタイピングで活用する

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AI、特にNotebookLMと画像生成(Nano Banana)をSFプロトタイピングで活用するには多くの方法があります。「AIの活用法」はちまたにあふれていますが、AIの進化自体が速いのですぐに陳腐化してしまいます。ここで扱うのは、画像生成のようなAIの性能自体で結果が決まる方法ではありません。AIを使って創造的マインドを鍛える手法を考えていきたいと思います。

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SFプロトタイピングについてはこちらをご覧ください。

AIは「あまり面白くないが大量のアイデアを出す」ことは得意です。しかし「意外かつすごく面白い」面白いアイデアを出すことは苦手のようです。SF短編小説ではこの「意外かつすごく面白い」が重要なのです。

もう一つ重要なのは、苦労して面白いアイデアを考えることは楽しいということです。ですから、もしAIが面白いアイデアを出せたとしても、SFプロトタイピングではさせるべきではありません。イラストを描くのが楽しい人に「AIだと一瞬で描けるよ」などと言っても意味がないですよね。SFプロトタイピングとは考える訓練なので、AIの役目はあくまでアシスタントに留めるべきです。

私のSFプロトタイピングでは「読むワークショップ(発散型)」「書くワークショップ(収束型)」の2種類のワークショップを行います。NotebookLMと画像生成はこのどちらでも活用できます。

読むワークショップ(発散型)

ワークショップの時間は限られているので、参加者の方に事前にSFに触れる準備をしていただいています。参加者の方には、私(八島游舷)がおすすめの作品を提示させていただきます。

事前にNotebookLMを個別に使って、参考作品リストの中の作品や自分の好きな作品について、概要を素早く知ることができます。全文が公開されている作品は、詳細な分析ができます。H・G・ウェルズ、ジュール・ヴェルヌ、メアリー・シェリー、海野十三のように、著作権切れとなった古典的SF作品は多数あります(古典SFは大きな影響力があり、とても面白いです)。近年の作品でもウェブ上に公開されており、著作権者が禁止していなければ、作品を理解するための解析を行うには問題ないでしょう。自分の関心事項に基づいて作品分析をすることもできます。

触媒物語を私が執筆したあとで、参加者の方のイメージを膨らませる補助としてその作品の画像を生成することもできます。完成した物語の設定をNotebookLMに分析させ、詳細なプロンプトを作らせることで、設定に忠実なイラスト画像生成や動画生成ができます。文字通り、想像力の解像度を上げることができます。

人間に倣いあえて本を読む自律ロボット、ジェイナス(「テラリフォーミング」より)

書くワークショップ(収束型)

書くワークショップ実施中でもNotebookLMをリアルタイムで使用することは可能です。アイデア出しの補助として使用できるでしょう。ただ、やはり時間的制約が厳しいことから、ワークショップ内で可能な限り文章でメモを書いていただき、ワークショップ終了後に、その中からアイデアをまとめるときにNotebookLMを使用できます。

もしワークショップで余裕があれば、プロットまでできた時点でそれに基づく画像生成を行い、参加者が自分の脳内イメージと生成画像を比較します。プロンプトとはイメージの言語化であり、描写作業そのものです。たとえばうまく生成できないと感じる点があれば、アイデアに何が不足しているかをチェックできます。たとえば、年齢や外見の指定がまったくなければ、予想と違った人物が生成されるでしょう(プロットのレベルではあまり具体的でないかもしれませんが)。逆に、画像を見て新しいアイデアを思いつくこともあります。

出したアイデアが十分に面白いといえるか、ツッコミを入れされるのも重要です。

また、最後に私が執筆した地続き物語をNotebookLMに解析させ、どのように実際の製品・サービス開発につなげていくかのアイデアを出す議論にも使えます。

どちらの場合でも、AIに任せっきりではなく、自分の考えを支援し鍛える使い方をしてこそ、有意義な使い方といえるでしょう。

超温暖化した世界で環境調整スーツを装着する(「テラリフォーミング」より)

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