
私が卒業した筑波大学の比較文化学類が合併され消滅すると聞きました。現時点では情報不足のため(あるいは情報が十分に公開されていない)、現状に至る経緯を私は正確に把握できていません。どう考えるべきかまだ分かりませんが、根底に人文学が不要という考えがあるとしたら残念なことです。一方で、これまでの人文学について「何の意味があるか分からない」、「何の役に立つのか分からない」という意見もあるはずです。言語能力や思考法など十分に基礎力がないのにいきなり応用に進む点に無理があったのかもしれません。
ひとまず、理想的な「未来的人文学」の学部を勝手に考えてみました。考えているうちに全学レベルで実現すべきことが多いことに気づきました。
言語能力を強みとする
語学力、コミュニケーション能力、物語構築力などの言語能力を核とする。日本語と英語での、全校的な語学学習、そしてアカデミック・ライティング研究および実践のハブとする。さらにその基礎のパラグラフ作文から学ぶ。ライティングに加え、口頭発表能力、スピーチ、ディベートも鍛える。TEDxも日本語と英語でどんどんするといいだろう。早稲田大学 文化構想学部も参考になるかもしれない。相手に伝わる言葉の力を身につければ、書く側にも読む側にも苦行だった小論文や論文をより有意義にできる。
科学的思考力を身につける
物理学、地学、生物学、エコロジー、数学など、年に最低2つは理系講義を受ける。
(全学レベル)コア人文教科を設置する
哲学よりも包括的な「ものの考え方」、論理思考、批判的思考、認識バイアスなどについて学ぶコア人文教科を設置する。国際バカロレアの知の理論を参考にするとよい。現代社会の常識として、比較宗教学の基礎は必須にしてもいい。
(全学レベル)語学教育を改革する
英語での講義は以前より増えているそうだが、まだ足りない。半分以上英語で講義してもいいし、他の言語での講義も行う。講義名が具体的に知的好奇心を刺激するものでなければならない。
TOEICではなくTOEFLを基準とし、シャドウイングに加えてリプロダクション訓練を行う(参照:アルク連載「バイリンガル小説家の華麗なる英語学習法」)
留学生の割合を1/4以上に増やす。
(全学レベル)大学教育のDX化推進
デジタル教科書、反転学習の活用。
(全学レベル)ICT技能を身につける
ワープロ、表計算、プレゼン、メモ取りのアプリ技能は学習・研究にすぐに役立つし、社会人にとって重要スキルでもある。研究分野としては、デジタル人文学も一つの方向性かもしれない。
語学学習や人文研究でAIをどう活用できるかも興味深い。
(全学レベル)社会との接点を持つ
筑波大学では特に社会との接点を失いがち。社会人講師を増やし、インターンの充実化を図ってはどうか。
SFプロトタイピング講義
文学と科学的思考力を融合させ、ビジョン策定力を鍛えるためにSFプロトタイピングは有用な手法。基礎的なSF文学、創作文章講座、マインドマップを使ったディスカッション、生成AIによる視覚化。