非日常的に危険な通学路で、中学生たちが謎の敵と戦いながら知恵を絞り集団下校する
フミトの通う第六中学は、環境ドームに囲まれ保護されている。指定「汚染」区域のためバリア外で自由行動はできない。
登下校専用のスクール・バスがその日に限って故障した。
学校には泊まれないし、親に迎えを頼むことはプライドが許さない。
集団下校して、日没までに帰宅するしかない。
女性教師、タドコロ先生が集団下校のルールを説明する。守らなければ命が危うい。
一つ。ノスティック・マスクとスーツを装着し、途中で外さないこと。外気に五十秒以上触れると「汚染」される。マスクは、気密を保ち、環境情報を表示する。
二つ。通学路ゾーンのみを通り、決して逸れないこと。
三つ。班長と先輩には絶対服従。
四つ。巡察者と不知者を回避する。クローラーはマスク内のマップに表示されるが不知者は表示されない。これらの存在に捕まると列車で拉致されるという。
夕焼けの中、フミトは五人のグループで、最年長の班長エリスの指揮の下、縦列フォーメーションで集団下校する。
エリスは帰宅部の部長で、通学路を熟知している。単独通学を続ける歴戦の強者。
エリスはフミトを副班長に任命し、フミトは年下のマナミとトモユキを送り届ける責任を感じる。
フミトが初めて歩く街の中は、すべてが夕焼け色に包まれて静かだ。謎の高い塔。遠くから響く列車のもの悲しい汽笛。シャッターが閉まった商店街の店先。
人はどこに消えたのか。
フミトたちは謎めいた存在と戦いながら下校する。