九重塔が宇宙船となり彼方の惑星にある大仏を破壊しに行く仏飛びSF
閻浮提(地球)から3.69e+13由旬離れた持双星に佛法が伝わって既に千六百年。
閻浮提では、超宗派の法勝寺の祈念炉が四万六千日の祈祷の果てに臨界に達し、第一宇宙速度に必要な推力が得られた。
宇宙僧は、瞑想と呼吸法を鍛錬し、肉体と精神を制御することで宇宙での過酷な活動によく耐える。
蓮台から抜錨した法勝寺は、医僧・巌真に率いられ、学僧・照海、機械僧・慧眼、尼僧エマヌエルらを乗せ、宇宙構造を示す曼荼羅を星図として持双星に向かう。
目指すは百八十年ぶりに開帳される紫釈院の大佛。法勝寺は、その開帳に合わせて転生佛候補のブリヤートの少女サルジェを紫釈院に送り届ける。
だが照海は、本山の大僧正から受けた秘密指令書を開封し驚愕する。
「忌まわしき持双星大佛を滅せよ」