AIを小説に活用する――NotebookLM

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最近、NotebookLMを創作活動に使い始めました。NotebookLMはGoogleのAIツールの1つです。チャットボットが持つ一般的な知識のデータよりも、自分の文書データを解析するためのものです。このようなツールは以前から存在していましたが、専門的なツールや知識が必要でした。 NotebookLMはそれらよりはるかに使いやすいツールです。なお、AIは進化が非常に速いので、この記事の内容は2025-11-12 時点の話であることをお断りします。またNotebookLMは語学学習など幅広い用途に使えますが、ここでは小説執筆での活用の話をします。

なぜAIを小説に活用するつもりになったのか?

AIが主役のSFを書いていながら、私は、小説執筆そのものにAIを活用することにそれほど関心を持っていませんでした。理由の一つにはAIを使うことで「他人のアイデア」が入ることに抵抗があったこともあります。応募作品にAIを使用してよい日経「星新一賞」の作品でさえも、AIを執筆には使いませんでした。これはAI使用の記録を取るのが手間だったためですが。

NotebookLMは、RAG(検索拡張生成)と呼ばれる手法に基づくツールです。私は基本的に、NotebookLMに自分が書いた文章しか参照させていません。こうすると、他人のアイデアに依存するのではなく、自分で作成したコンテンツという感じがあります(最終的に画像生成した場合は、そうでもないですが)。これがNotebookLMのようなAIを小説執筆に利用してもよいと感じた理由です。

NotebookLMはSFと相性が良い

NotebookLMは、SF、特にハードSFと相性が良いです。ハードSFでは話の展開が論理的なので、内容解析がうまくいきやすいと感じます。また、必ずしも現実の科学でなくてもかまいません。『天駆せよ法勝寺[長編版]』の佛理学でも問題ありません。緻密に構成された世界観との相性はいいです。

またNotebookLMは、SFプロトタイピングでも、中高でのSF授業でも活用できます。これは機会があれば詳しく書きます。

NotebookLMは執筆のどの時点で使えるのか?

NotebookLMは執筆のどの時点でも役立ちます。つまり、自分でアイデアを作る段階から、執筆途中の推敲、そして完成した後のプロモーションなどにも使えます。ただNotebookLMは手元のデータに基づいて動作するため、「新たにアイデアを作らせる」作業にはあまり向いていません。続編や前日譚のアイデアは出してくれるでしょう。でもそれは自分で考えたほうがたぶん楽しいです。

NotebookLMはどう使うのか?

NotebookLMに、「ソース」と呼ばれる、テキストを主体とした情報をアップロードして、そのソースを分析させます。それに基づいてユーザーとやり取りし、新しい情報を生成します。NotebookLMを執筆アシスタントとして使うなら、最初のソースはその小説そのものでしょう。小説を分析して新たに生成されたテキスト(レポート)もソースにすることができます。

書きかけの小説をソースにすることもできますが、それが書きかけであることは留意しておく必要があります。完成した文章と書きかけの文章をソースに混在させると、想定通りの結果が得られないことがあります。その場合は、出力する前に使用するソースのみを選択できます。

NotebookLMは何に使えるのか?

NotebookLMは、執筆支援からイラスト作成支援、小説のプロモーションまで、アイデア次第で様々な事に使用できます。以下にいくつか例を挙げます。

年表を作成させ、矛盾点をチェックさせる

NotebookLMに、小説に基づいて年表を作成させ、矛盾点をチェックさせることができます。実際に、私が現在執筆中の『天駆せよ法勝寺[長編版]』で問題点をいくつか見つけてくれました。特に長編小説ではチェックしづらいこともあるので役立ちます。

NotebookLMに用語集を作らせる

NotebookLMに小説の用語集を定義付きで作らせることができます。実際に『天駆せよ法勝寺[長編版]』の用語集を作らせてみました。すでに手作業で作成した用語集があったのですが、改めて作ると気づきがいろいろありました。もし作中で重要な用語なのに生成した用語集に含まれていない用語があれば、作中できちんと定義されていない可能性があります。

NotebookLMを翻訳支援に活用する

NotebookLMに対訳用語集を作らせ、まず自分でチェックします。用語集としての完成度を上げてからソースとして追加し、NotebookLMに作品を翻訳させることができます。

実際に日英で翻訳させてみてかなりうまくいきました。用語集に加え、キャラクター設定、前後の文脈までよく把握したうえで翻訳されています。ただ1回翻訳するごとに結果(言い回しなど)がかなり違います。

イラスト作成支援

NotebookLM自体は直接画像生成することはできません。しかしNotebookLM、登場人物、重要なガジェット、風景などのイラストを画像生成するためのプロンプトを作らせることができます。小説の内容に基づいているので、より的確なプロンプトを作成できます。

Final Anchors」のこの画像は、ロゴ、車、人物のすべてを個別に作っています。文字はあとで画像アプリAffinityで入れています。

その下の「スマート箱男」のポスターも同様。画像のためのプロンプトにNotebookLMでの内容解析を使用しています。調整を何度も繰り返しているので、完成までかなりの手間と時間がかかかっています。

もちろん、完成作品だけでなく、執筆途中の作品の人物や情景を視覚化するときにも使えます。

小説に基づく動画や音声を生成させる

NotebookLMでは、小説に基づく動画や音声を生成させることができます。動画は、NotebookLMがプレゼンを作成して、それにナレーションがつく形です。ここでは、AI生成された画像がプレゼンの画像として使用されます。生成される内容は、ある程度制御する方法はありますが、それでも上手くいく時と、そうでない時があります。

以下はNotebookLMで生成した動画の例です。調整や修正はしていません。

以下は修正した例です。

動画編集アプリのDaVinci Resolveを使用して、前述の画像を含め、別途生成した画像に差し替え、さらに別に作ったサウンドトラックを追加しています。一般に、音声はかなり自然でよいのですが、生成される画像に一貫性がないため、そのままでは使いづらいです。

また、英語音声のほうが日本語よりもさらに自然のようでした。

NotebookLMの活用のコツ

NotebookLMをうまく活用するにはいくつかコツがあります。まずはマークダウン形式です。これは、シンプルな記号を使ってテキストに書式をつける方法です。情報をやり取りするときはテキストでもいいのですが、マークダウン形式を使うことで、長く込み入った情報をAIと上手くやり取りすることができます。つまり、NotebookLMにマークダウン形式の情報を出力させたり、こちらがマークダウン形式の情報を与えたりします。

もう一つはソースの選択です。特定の結果を出したい場合、ソース自体の質が悪いとうまくいきません。最初は書きかけでなく、完成した小説をソースとして使うことで、NotebookLMの使い方に慣れたほうが良いと思います。

NotebookLMは安全に使えるのか

原則としてアップロードした内容はAIの学習には使わないとGoogleは言っています。ただこの点に懸念がある場合は使用しないほうが良いかもしれません。

NotebookLMのバグ

2025-11-05 09:14時点で、シフトJISのテキスト ファイルをソースとして追加すると文字化けします。UTF-8に変更する必要があります(Discordで報告済み)。

機能要望

ルビ:ソースのアップロードで使うGoogleドキュメントが日本語のルビ(読みがな)をサポートしていないので、ルビ付きのWord文書はテキスト形式に変換するなどの工夫が必要です。

出力のキャンセル:現状、レポートや動画作成は途中でキャンセルできません。これは数分で済むとはいえ、キャンセルできるといいですね。誤って出力した場合でもキャンセルすることで利用回数がカウントされないようにするとなおいいです。(出力内容をカスタマイズしたい場合はNotebookLM Stuioの鉛筆アイコンをクリックする必要があります。「動画解説」自体のアイコンをクリックしてしまうとすぐに動画解説の作成が始まるのでご注意)。

ファクトチェック:動画解説ではいきいきとした解説をしてくれるのですが、勢い余って「誇張表現」することがあります。「少しはある」のを「まったくない」と言うなど。動画解説自体はクリックするだけでできますが、結果に1つでも誤った情報があると、動画を訂正するのには手間がかかります。出力をする前に、スクリプトにファクトチェックをしてほしい。

マインドマップ:マインドマップは現状、画像としてしか出力できません。出力をMarkdown形式でも保存できるといいですね。

レポートの出力の書式:レポートの出力は「書式付き」ですが、なぜかMarkdown形式ではないので、Markdown形式にしてほしい。

音声のカスタマイズ:現状では出力音声に「女性」「(若い)男性」の2種類しかないようです。話し方、年齢などの指定ができると表現の幅が広がります。ポッドキャストもカスタマイズできれば、物語の登場人物2人で作品について語らせることもできますね。

画像生成AIの課題

以下はNotebookLMそのものではなく、画像生成AIの問題点です。

テキスト:現時点では画像中のテキスト、特に日本語が適切に画像化されません(その結果、NotebookLMで生成される動画に含まれる画像にも同じ問題があります)。これは解決不可能な問題ではないので、おそらく2026年中には改善、あるいは解決されるような気がします。

プロンプトの無視:優れた画像生成ができるNano Bananaでも、明らかに指示を無視することがあります。出力した画像を自分でチェックして、もしプロンプトに従っていない場合は自動で訂正してほしい。情報が不足しているためにうまく生成できないなら、そのことを知らせてほしい。

問題の例:「対称」という概念をよく理解していない。人物が砂浜を歩いているとき、人物の前に足跡ができる。人物の体の向きを回転させることに苦労する。

結論:AIが小説執筆そのものをするわけではない

NotebookLMは、小説そのものを生成させるようにはできていません。そうするのは不可能ではないでしょうが、NotebookLMだけではどちらにしても難しいです。しかし、NotebookLMを使うと、小説の品質を上げたり、イラストや動画などの追加コンテンツでより華やかにしたりすることはできます。

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