ポスト万博としての未来実験都市

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今回の万博の経済効果、安全性などの問題とは別に、万博というイベントの限界として、インターネットの(また限定的だがメタバースの)台頭、半年という時間制限、持続可能性という点などがある。万博実施者はインターネットを積極的に取り込んだバーチャル万博を開催したり、持続可能性を強調したりしているが、やはり限界がある。大屋根リングも結局一部しか再利用されないらしい。

万博は列で待たされるし、時間的に余裕がなさすぎる。物理的な開催では、開催側が伝えたい情報の量に対し、来場者が受け取られる情報量に限界がある(実際はオンラインでチケットを表示するだけでも待たされるのでネットでも列に並ぶことになるが)。遠い場所から大阪を訪れたのに、1つのパビリオンに入館するためだけに1時間以上かかるというのはおかしい。

私はしばらく前にイタリア人2人に東京を案内した。江戸東京博物館や国立博物館などの見どころに行くことを考えていた。だが彼らは浜離宮庭園を選んだ。貴重な東京での休日をほとんど浜離宮庭園でのんびり過ごした。ガイドブックを開くこともなく、スカイツリーなど見向きもせずに。すべての人がこれを見習うといい、とは言わない。実際私も好奇心旺盛なのでいろいろと見て回りたいと思うだろう。だが浜離宮庭園でのゆったりとした散歩は実のところ、極めて贅沢な東京の過ごし方だった。そして私は確かにその贅沢な時間の過ごし方を学んだ。

万博というイベント自体の意義は否定しない。だが異文化交流と最新技術という万博が本来持つ魅力を生かすには、半年だけのイベントではなく、50年ビジョンに基づく継続的な発見と学びの場として未来実験都市を建設することが必要なのではないか? 「暑い中、列に並んで駆け足で見て回るだけ」でなく、より深い相互理解が得られる。ギャンブル中毒の危険があるカジノよりもきっと有意義だろう。

未来実験都市では、ドローン、ロボット、自動運転が常に生活の中にあるのはどのような状態なのか、短時間の体験だけでなく、長期的な実証実験が行える。また短期だけでなく、継続的に経済効果を持たせることができる。安全の確保、利便性の向上にも十分に時間をかけて対処できる(万博アプリが使いづらいからといって、今後半年間でそれが改善されるだろうか?)。

世界各国との相互理解を深めるにも時間は必要だ。10分程度パビリオンを見ておしまい、ではなく、より深い対話が必要だろう。自動翻訳を最大限に活用するとしても、言語を直接理解する場合の2倍以上かかるため、やはり時間が必要となる。世界各国をリアルタイムで結ぶ「ポータル」と「アバター」で、各国の人々と対話する場とするのもよいのではないか。ポータルは、固定された大型モニターとカメラで特定地点を結ぶ。アバターは、操作・移動可能なロボットで、各国や実験都市内を自由に動きながら周囲の人と対話できる。相互に学ぶ場として各国スタッフは継続的に日本語を学び、日本語で説明する。

実験都市には滞在施設を含めるのもよいだろう。数日の滞在でもいいし、数か月かけてアーティスト・イン・レジデンスやライター・イン・レジデンスをするのもいい。もしワクワク感が足りないなら、十分にワクワクできるアイデアをSF作家と一緒に考えればいい。

皆さんのご意見もぜひ伺いたい。

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