新人作家がいきなりワールドコンに参加してみた3・「心に残る地形―物語に影響した景観」など

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「拙作の朗読」から続く

7/30。

藤井太洋さんとEli K.P. Williamの朗読会に参加した。前者では未公開の話を伺えた。後者では彼の作品と仏教的地獄との関連について聞いた。EliさんはSF作家で、平野啓一郎の英訳もしている。

7/31。

“Terrain of the Heart: Landscapes that Influence Story”
「心に残る地形―物語に影響した景観」

に登壇した。CoNZealandで最初に登壇するパネル ディスカッション。日本時間9時開始なのでカフェイン補給が必須。朝飯を食べていてZoomに参加するのがギリギリになってしまった。パネリストを含めて96名程度が参加した。

ニュージーランドと植民地時代の話題、マオリの地名の話が出たので、『ゴールデンカムイ』を手掛かりに北海道のアイヌ地名について触れた。また『日本沈没』に言及した。Netflixでのアニメ化もあったのでタイムリーか。トールキンの「中つ国」と中華思想、そして「倫理地理学」について。トールキンでは「東が悪で西が善」という構図になる。西にヴァラールの大陸アマンがあるという構図は、浄土信仰を連想させる。ニュージーランドやオーストラリアなど南半球の国は、「一般的な地図」では下になる。地図の心理的効果は作品にも様々な影響を及ぼす。

パネリストDr Russell Kirkpatrickはニュージーランドでの『ロード・オブ・ザ・リング』の映画撮影で、マオリが主にオークなど悪役として扱われたことを非難した。

現代においては人工的な地形を無視できない。タワー マンションは宇宙船のように閉じた自律環境だろう。ポスト・コロナ時代には、「都市」の概念も見直す必要があるだろう。より広い間隔を維持した生活空間の設計が必要になる。

日本がかつて「木の文明」であったこと、湿潤気候により木造建築が主流であったこと、西欧の「鉄の文明」がそれを変えて近代となったことについても触れたかった。準備した内容をすべて話せたわけではないがまあまあかな。モデレーター入れて4人で50分ならあっというま。モデレーターもしばしば作家なので語りたいことがあるんだよな。

他に”Writers on Writing: The Plot’s the Thing”(作家が文章について語る―プロットの重要性)を聴講した。プロットをどこまで書くかは作家にとって重要な問題。参加者には様々なレベルの作家がいる。執筆ツールScrivenerについて言及があった。まあ私はOneNoteで間に合っている。

“Magic Systems in Fantasy”(ファンタジーでの魔法体系)も面白かった。このパネルで佛理学を紹介したかったところだ。

SFよりファンタジー寄りのパネル ディスカッションに登壇することになったが、これはむしろ私の関心に近かった。トールキン、ル・グゥインなどの名前は今でも繰り返し出てくる。

“Post The Three-Body Problem: What Is Happening in Mainland Chinese Science Fiction?”(『三体』以後―主流中国SFでなにが起きているのか)と
“Is Cyberpunk Mainstream Now?”(サイバーパンクは今も主流か)も聴講した。

ワールドコンの雰囲気にも少し慣れてきた。オンライン開催では、回線が悪いと映像や音声が停止するが、複数のイベントを同時に聴講することもできる。多くの場合、録画はあるので後で見ることもできるが。ご飯を食べながら参加できるのも利点だな。スマートフォンで参加してBluetoothヘッドフォンで聞けば、他のことをしながら聴講することもできる。またDiscordの検索機能を活用すれば必要な情報を見つけることができる。

次の登壇予定はこれ。

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