SFプロトタイピングとは【#SFプロトタイピング】

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SFプロトタイピングとは、企業・組織の依頼でSF作家が短編小説を執筆し、それを触媒としてイノベーションを起こし、新しいビジネスを開拓する活動です。

なぜSF小説なのか?

SF映画とSF小説を比較して考えてみましょう。

SF映画(またはアニメ)では、大量の予算をつぎ込み、華々しい特殊効果で未来を描き出します。ロボットや宇宙船は、その目的、動作原理、細かい構造、来歴まで考えられ、具体的な形でストーリーの中に提示されます。受け手は完成品を受け取るだけで、想像力を働かせる余地はありません。

これに対して、SF小説では、作家は想像力を駆使して未来を頭の中で作り上げます。ロボットであれば、いつごろ、なぜ作られ、どんな動力で動くのか、できることとできないことはなにか……すべて具体的に考える必要があります。そして小説の場合は、読み手もまた、自らの想像力を使ってこれまでにないものを頭の中で再構築します。そこにまったく新しい製品やサービスが生まれる可能性があるのです

これまでに数多くのSF作家が、ロケットやインターネットなどの技術を、それらがこの世に出る遥か以前に想像して小説の中で示しました。ジュール・ヴェルヌは『海底二万マイル』で潜水艦を、アイザック・アシモフは『我はロボット』でロボットを、ニール・スティーヴンスンは『スノウ・クラッシュ』でメタバースやアバターを。

ただ、SFプロトタイピングの物語は具体的な製品やサービスのアイデアをそのまま提示するのが目的ではありません。具体的な製品やサービスを考えるのは依頼側の仕事です。SF作家は、未来のシナリオを描いて示すことで「ヒント」を出します。1~数回のワークショップで依頼側とSF作家、あるいはその他の有識者が参加して議論を深めます。

SFプロトタイピングにかかわるSF作家は、対象分野の専門家ではありません。依頼企業や組織は、長年同じ製品やサービスにかかわることで、発想が固定化してしまっていることがあります。まったく異なる立場や経歴を持つSF作家が関与することで、これまでにない新鮮な考え方にたどり着くことができます。

対象となる分野はなんでもありです。たとえば私は作家・樋口恭介さんの株式会社アノン様が実施した、小岩井乳業様でのSFプロトタイピングのプロジェクトに参加させていただきました。また拙作「Final Anchors」は、自動運転とAI法廷の未来を考えるSFプロトタイピング的ストーリーともいえます。本作では、緊急制動システムであるファイナル・アンカーや交通管制システムであるマーキュリー・システムという具体的なソリューションを提示しており、将来的には必ず起きるであろう自動運転での交通事故について考えることができます。また拙作『天駆せよ法勝寺[長編版]』は、仏教の未来を考えるSFプロトタイピング的ストーリーです。多様化した信仰は多様化した世界にどのように適応しうるのか。仏教の国際化、女性と仏教、信仰と科学の関係などについても触れています。最近ではデンソー様でSFプロトタイピングを実施させていただきました。

今後、SFプロトタイピングの公開可能な実例は情報公開していく予定です。私が作品を執筆するとき、そしてワークショップに参加するときは国際バカロレアの「知の理論」の方法論を参考にしています。たとえば、異文化理解、多様性への配慮は、SFと通じる点があります。異星人、AI、ロボットとの対話は、ある意味、究極的な異文化理解や多様性配慮といえるでしょう。

SFプロトタイピングに興味を持たれた企業・組織の方は、お気軽にご連絡ください

SFプロトタイピングについては今後も記事を書きますのでご期待ください。

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