天駆せよ法勝寺【第9回創元SF短編賞受賞】

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九重塔が宇宙船となり彼方の惑星にある大仏を訪れる仏飛ぶっとびSF

法勝寺ほっしょうじの祈念炉は長い祈祷の果てに臨界に達し、第一宇宙速度に必要な推力が得られた。

そびえたつ九重塔は、宇宙の真理を解き明かした最新佛理学の結晶。異質な時空を切り裂き、彼方の星までわずか四十九日で到達する星寺だ。

目指すはここ閻浮提えんぶだい(地球)から三十九光年彼方の持双星じそうせい

法勝寺は、医僧・巌真に率いられ、学僧・照海、機械僧・慧眼えがん、尼僧エマヌエルらを乗せ、宇宙構造を示す曼荼羅を星図として持双星に向かう。

七名の宇宙僧は、瞑想と呼吸法を鍛錬し、肉体と精神を制御することで宇宙での過酷な活動によく耐える。

持双星・紫釈院の大佛は百八十年ぶりに開帳される。法勝寺は、その開帳に合わせて転生佛候補のブリヤートの少女サルジェを紫釈院に送り届ける。

だが照海は、本山の大僧正から受けた秘密指令書を開封し驚愕する。

「忌まわしき持双星大佛を滅せよ」

謎の黒い飛翔体。次々と現れる異形の偽佛。唸る交響転経機。エマヌエルは金剛力士を装佛し、照海も強力な佛を勧請する。

サルジェの運命やいかに!? そして

ブッ、ここに始まる。


お試し版をこちらからお読みいただけます

本作品には佛理学(と仏教)用語が多数使用されています。用語集がありますのでご覧ください

2018年4月24日に、本作品は第9回創元SF短編賞を受賞しました。本作は2018年6月に東京創元社から刊行された『プロジェクト:シャーロック (年刊日本SF傑作選)』(創元SF文庫)に収録されています(販売中)。

また単体の電子書籍としても販売中。

3件のコメント 追加

  1.  天駆せよ法勝寺、読みました。
    高校時代の修学旅行で曼荼羅を初めて見た時、曼荼羅は宇宙を表している、という説明を受けて、自分の中でイメージしていた宇宙観がズーッとあり、そのイメージと曼陀羅が合致して、曼陀羅の意味が理解できた事に興奮したのを思い出しました。
     仏教は宇宙(この世界)の真理を説いた宗教ですし、確かに仏教とSFは親和性が高いのかも知れませんね。
     途中、仏教用語?なのか、名称に漢字が多用されて理解を追いつくのに苦労した部分も有りましたが、お寺が宇宙船で、宇宙を旅するという物語の世界は秀逸でした。

  2. yugen より:

    虹崎さん、ご感想ありがとうございます! 本作は自分で書いていて楽しい作品でした。ロングバージョンも書く予定です。