ゲンロン大森望SF創作講座とは

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どんな講座?

2017年から2018年にかけて、ゲンロン大森望SF創作講座第二期を受講しました(2019年現在は第三期が実施中です)。

この講座では、現役の著名な作家と編集者がゲストとして参加します。

毎月一回、ゲスト講師が課題を出します。第二期の講師は(以下敬称略)、主任講師の大森望をはじめとして、東浩紀(ゲンロン元代表)、長谷敏司、藤井太洋、円城塔、法月綸太郎、飛浩隆、山本弘、恩田陸、新井素子、山田正紀という錚々たる顔ぶれでした。このラインアップだけで受講を即断した人も多いはずです。

このSF創作講座では、課題に応える梗概(あらすじ)を提出して、選者による選考がされます。その結果として選ばれた上位3、4人が実作を書きます。直前の回の梗概に基づいて執筆された実作の講評も同時に行われます。この梗概および実作の講評会が、講座のメインです。実作として選ばれない場合でも、自主的に実作を書いて提出することもできます。しかし、講評を受けられる保証はありません。

講座のスタイルも作家の個性が現れ、円城さん、飛さんのように丁寧で体系的な講義をされる場合もあれば、新井さんのように話を聞くだけで楽しい回もあります。

なおゲンロン大森望SF創作講座第一期の模様は書籍『SFの書き方』として読むことができます。

講評会の一部は、ニコニコ生放送で視聴できます。Twitterの#SF創作講座 のハッシュ タグでも情報が得られます。

実作には講評とともに点が付けられ、作品も得点もすべて公開されます。基本的には、梗概として選ばれ、その梗概に基づいた実作が、講座での得点の対象となります(例外もありますが)。

講評は毎回夜遅くまで行われ、講師や編集者の方の熱意には頭が下がります。講評は名前順で、私がいつも最後になるので、講師の気力が途中で尽きないか、忘れられないかひやひやしていました。

講座本体とは別に、卒業生有志が自主的に感想を述べ、講評するポッドキャストとして、ダールグレンラジオ、SF創作講座2期ゴッドガンレディオがあります。ダールグレンラジオでの講評では、講座での講評とはまた別に、どんな反応があるかドキドキしながら聴いて一喜一憂していたものです。

私は8回中5回実作を書きました。「Final Anchors」、「天駆せよ法勝寺」など、後に賞を受賞した作品のいくつかは、この講座で書いたものです。

受講生と卒業生

受講生の年齢、職業、執筆経験、SFに対する知識は様々です。SFはほとんど読んだことがないという人、創作作品自体を書いたことがあまりないという人もいますし、第一期の高橋文樹さんのように受講前に新潮新人賞を獲っていた人もいます。

第一期卒業生からは、2019年1月現在で、名倉編(『異セカイ系』。同作でメフィスト賞を受賞)、櫻木みわ(『うつくしい繭』)の2名が単著を出版しています。

第二期卒業生からは、神津キリカ『水靴と少年』が第一回 宮古島文学賞を受賞し、この他にも文学賞の最終選考に残った人が数名います。

第三期も文学賞の最終選考に残った人がいます。

上記の実績を踏まえると、今後、どの期からも文学賞の受賞や出版に至る人が出ることは確実です。編集者の方ならこのゲンロン大森望SF創作講座にぜひ注目すべきでしょう。

講座内での評価とその後の実績は、必ずしも関係がないようです。もちろんこれはこの講座に意味がないというわけではなく、受講中・受講後の個人の努力や他の要因があるはずです。

その他に電子書籍や雑誌、同人誌などで執筆している卒業生、受講生がいます。

梗概を鍛えて短編を書く

梗概は、実作のいわば設計図です。この講座では梗概がまず選出されないと実作講評につながりません。実作の前に梗概をしっかり書く、というこの講座の方法は非常に役立っています。

梗概の書き方と創作手法についてはいくつか記事を書きました

また、その梗概に基づいて書く実作は、短編です。

私は以前は短い作品ばかり書いていました。いきなり原稿用紙200枚書く、といったことに挑戦する前に身に付けておきたい技術がいろいろあったからです。

一般的には、創作に挑戦する場合、ショートショート、短編、中編、長編の順で、徐々に長い作品を書くのが適していると思います。とはいえ、短編・長編に関する見方は個人差が大きいです。短編のほうが長編より難しい、という説も一理あります。簡潔にバランスよくまとめる必要があるからです。短編やショートショートを専門にする作家もいます。いきなり長編を書く人もいます。

結論

文学コンテストの最終候補に残る程度の実力がある人なら、迷わずSF創作講座を受講すべきです。私が大学生のときくらいにこの講座があったら必ず受講していたはずです。人気の講座なので、募集開始後に迷っていると、すぐに定員になってしまいます。

受講中の一年は、生まれてこのかた、もっとも大量に作品を書きました(プロからすると大した量ではないはずですが)。毎月課題を提出するのはなかなか疲れますが、読んでもらえると思うとやる気もわいてきます。

もちろん、実力や得点に関わらず、なにがしかきっと得るものはあります。講評会で(運が良ければ懇親会でも)前記の作家や編集者に接する機会もふだんはなかなかないでしょうから。

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