江戸1910

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大富豪の動画投稿者が時を遡り訪れた江戸では巨大木製ロボットが大名行列を先導していた

明治維新が起きず、日本「以外」の国が鎖国した世界。産業革命が訪れなかった江戸に異世界人が来航する。彼らとの交易は、鉄の代わりに、強化された木の文明をもたらした。

あらすじ

別の時代につながる時間水門が、世界各地の八箇所に突如出現した。混乱を経ていずれも国際管理委員会により厳重に警備されている。

アメリカ人のWhoTube人気ヴロガー、マーキスは、登録視聴者数三千万人を抱え、莫大な富を得ていた。違法すれすれの挑発的な動画が売り物だが、最近は視聴者が激減していた。再起を期すマーキスは、日本にある時間水門の場所を特定。忍者の末裔でもあるボディーガードの御木本とともに、大金を投じて準備した最新型のステルス・クルーザーで違法侵入する。目的は、幕末の江戸でハラキリを撮影すること。

江戸に上陸し、サムライ映画そのもの町並みに感動するマーキス。片言ながらも現地日本人に英語が通じる。なにかがおかしい。

二人は、流暢に英語を操る幕府の英語侍、高田と知り合い、歓待される間に状況を徐々に把握する。

西暦1910年の江戸。そこでは、幕府の実権を掌握する執権であり、不世出の外交の天才、旗野の指導のもと、幕府が開国を決断し、明治維新が回避されていた。尊王攘夷と倒幕運動は完全に封じ込められ、近代化は幕府により成し遂げられた。銃刀廃止令が出され、軍事階級として新武士道の意識改革が進められていた。

一方、欧米諸国は移民を徹底排斥し鎖国しつつあった。神奈川沖には、閉鎖的なアメリカやヨーロッパから逃れてきた脱走者たちによる「独立艦隊」が碇泊していた。

この世界で開国を要求したのは、アメリカでも西洋諸国でもなかった。

五十年前、白い巨鳥のような「城船」が神奈川沖に来航。来訪者は「店人てなんと」と呼ばれ、数々の驚異的な先進技術を持っていた。

木材を鋼鉄より固くする技術。人工筋肉のように強力に収縮・伸張する「強織紙つよおりがみ」。

それらを応用した木製の人型機械、ボクト。

店人たちは、日本との通商を要求。旗野は、諸国の機先を制して条約を締結し、店人が開示した技術をいち早く取り入れた。しかし、その見返りに幕府はなにを提供しているのか!?

違法の銃と剣で襲いかかるオールド・サムライに、立ち向かうのは謎の女操士・推子と彼女のボクト《コキ》。

江戸工芸の粋を極めた漆塗りの木製ロボットが舞い、電磁手裏剣が飛び、ダールグレン砲が火を噴く!


本作品は公開準備中です。

用語解説

オールド・サムライ――銃刀禁止令に抵抗する侍たち。

独立艦隊――欧米各国の鎖国に抵抗して横浜沖に集結した混成艦隊。

艦隊村――独立艦隊の民間人を中心とする居留地。

横浜壁――艦隊村周囲に建築された壁。

店人てなんと――異人とも。異世界からの訪問者。

城船しろふね――店人の船。

ボクト――木徒とも。駆体(ボディー)は、江戸の職人が作り、店人の城船で完成する。

城ボクト――30から50メートルにも及ぶ超大型ボクト。一国一城と同様に、各大名家に一体のみが認められている。

個霊こだま――ボクトの意識。

骨牌かるた――個霊が宿る小片。

核体――骨牌を収め、ボクトの脳と神経系に相当する中枢部分。店人から提供される。

操士そうし――ボクトと契りを交わし、ボクト内部から操る技能を持つ人々。武士に代わって台頭している。

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